平成29年度『東京都中小企業技能人材育成大賞知事賞』大賞に同会員の株式会社アトム精密が見事に選ばれました。同社の代表取締役一瀬康剛社長に、受賞までの経緯について取材をさせていただきました。
今回の受賞について聞くと「そんな大したことしてないんだよ〜」と、少し照れた様子で一瀬社長らしい一言。人材の育成・教育、その為の指導員の選定。遡ること2年前「外国人を雇用する!」と社内にアナウンスをしたのがキッカケで、会社の取り組みとして力を入れ始めました。
A•B•C評価のスキルマップを作成し、一人一人に何ができるのかを明確にしたこと。それらを戦略的に行い、人材育成をしてきました。実際には、外国人には一つ一つ丁寧に細かく教えなければいけないそうで、一瀬社長の言動には、納得するまで何度でも続けて答えを探す。と言った向き合うことへの姿勢を大事にしている。と取材を通して感じられました。
また「人材育成に取り組んで何か変わったことはありますか?」と尋ねたところ、「従業員の表情が明るくなった(笑)」以前は黙々と作業をしている現場だったそうですが、「教える為にコミュニケーションを取ることが多くなったから」だとお話されていました。
実際問題として、世間一般では離職率の理由の第一位は人間関係だそうです。しかし同社でのこの理由の離職は、ここ数年全く無いようです。
そしてもうひとつ・・・。
「理由はわからないが利益率が上がった」とも、お話されていました。
技術の向上により生産能力が上がり、教育する中で従業員同士がコミュニケーションをとることによって、問題解決への時間短縮が出来て無駄が省かれたのではないか・・・。とお話されていました。
今回の取材を通して、人材育成は技術承継に欠かせない事ですが、一人一人が働きやすい環境にする事が何よりも大切で、人と人との繋がりと信頼関係が大切だと感じられました。
製造業は企業が衰退していかない為に、常に設備投資をしていかなければ、業界から置いていかれる。と言うイメージを持ちますが、それは最新の設備投資とのイタチごっこです。しかしそこから脱却する為に、他にもやることがある。と言うことを一瀬社長のお話には、ヒントとして秘められている様に思いました。
番外編・・・
『実際にあった貴重なエピソードがひとつ。』
以前、あるスタッフから入社3年目の従業員さんに対する解雇の申し出があったそうです。
その時、一瀬社長は反対をしたそうで、「本当にちゃんと指導したのか?」「やりきったと言えるのか?」と問うたそうです。「もう一年様子を見て判断しよう・・・それでもダメなら自ら解雇を言い渡す。」と言ったそうです。
一年間、社長自らもその社員に時間を費やし接したそうですが、残念ながら、また別のスタッフから解雇の申し出があったそうです。
その際も、社長1対9(スタッフ)で言い争いをし、「日本人を育成できないのに、外国人を育成できるわけがないだろ」と言ったことを記憶しているそうです。
この一連の騒動は、実に一瀬社長の人柄が出ているところとなり、一人一人と真剣に向き合い、納得するまで何度でも続ける。と言う姿勢に、その大切さを感じることが出来ました。