今年度第6回目の出前講座は、株式会社ブックセンターいとう副社長の橋本圭二(未来塾2期生)が登壇しました。
帝京大学からほど近い場所に店舗を構えていてお馴染みということもあり、学生さんも、いつもより興味深々の様子。
以下、当日の講義内容をレポートします。
①会社紹介
ブックセンターいとうは、創業は昭和50年。古書の売り買いの他にフィギアや電化製品も扱っており、店舗販売だけでなく、ECサイトにて通販もやっている。また、システム開発の部門もあり、ネット販売のツールも販売している。
https://www.book-center.co.jp/
②入社の動機
学生時代にブックセンターいとうの前身である伊藤書店へアルバイトとして入社。その後バイト漬けの毎日を送り、平成3年の法人設立時に正社員に。現在は副社長として忙しい日々を送っている。
③新刊書店と古書書店の違いと本の販売について
新刊書店は書籍を取次店から仕入れて、決められた価格で売る。売れなければ返品できる。
一方古書店は価格を自由に設定できるものの返品できない。
業界は厳しい状況が続いており、新刊書店は1日あたり1店舗以上閉店しており、古書店も最近12年で500店舗が閉店している。
④出版物の現状
1997年以降、新刊書店の販売が低下し続けている。要因としては、
a,漫画、雑誌を読まなくなってきた
b,ゲームやスマホがある
c,インターネットの普及
などが言われている。
新刊の販売には、再販制度という制度があり、価格が守られており、どの地域でも同じ価格で販売されている。そのおかげで、出版社の自由な出版活動が守られ多種多様な出版物が供給されている。その反面、競争力が低下したり、売れなければ返却できるため資源の無駄遣いも発生している。
海外では、時限再販という制度があり、一定の期間が過ぎれば安くすることができるなど、国によって制度が異なるのだそう。
⑤電子書籍について
最近では、本が電子化されているが、アメリカと比べると日本は電子化が遅れている。その理由は、アメリカには再販制度のような制度がないため自由に価格が決めらることができ定価で本を買うという概念があまり無い、さらに、日本で流行らなかった原因は取次店の力が強く、取次店中心の流通システムが確立していて電子化の必要がなかった。ただし、電子書籍は低価格というメリットがあるので、今後は普及していくであろう。そうなると古本屋としては売り買いができないので、商売は厳しくなると感じている。
⑤ネット販売について
ネット販売の普及で欲しい1冊だけを買えるるようになった。そのため消費者が来店しなくなる。来店すると、目的の本以外の本もついでに買ってくれていたが、ネットではそういったことが起こらない。そのため、ブックセンターいとうでも通販にも力を入れており、Amazonや楽天市場を利用している。現在では、1日に1,000冊ほど取引されている。
⑥システム開発の業務について
Amiosという販売管理システムを開発して販売している。このソフトはAmazonと楽天での通販に特化した、販売から在庫管理までできる優れたシステムである。某大手古本屋もネット通販を始めた頃はこのシステムを利用していた。特に優れているのは、Amazonや楽天の人気度を加味して在庫管理から販売までを行えるところである。
開発のきっかけは、Amazonからのオファー。なぜオファーがあったかというと、通常は1冊づつAmazonに出品するのが普通だが、開発したソフトを使って、1度に30000冊出品したそうで、Amazonが何をしたのか?と問い合わせてきてやり取りが始まった。
http://www.book-center.co.jp/amios/
⑦古本屋よくある質問Q&A
a,本の買い取り価格が安すぎませんか?
⇒実は、トータルで見ると10冊買い取っても4冊程度しか売れず、残りは倉庫行きになる。返品もできないから沢山倉庫を用意する必要があり、維持費がかかる。また、1ヶ月に30トンほど再生資源ゴミになっている。ベストセラーであっても旬を過ぎたらゴミになってしまうのがつらいところ。
b、買い取り査定はどうやって出しているの?
⇒昔は経験がモノを言っていたが、現在はネットで値段が分かってしまうので、経験がなくても買い取り査定できる。内容は関係なく、人気度で価格が決まる。
c,うまく本を売る秘訣って?
⇒タイミングが全てである。ベストセラーは早く売るのがコツ。人気が出たら売る。映画化やドラマの最終回にあわせて売る。
作者が事件を起こしたりメディアに出たりしたら売る。作者が亡くなった時に売る。などなど、タイミングが最も大事。
d,教科書は売れるの?
⇒毎年教科書が変わることが多いから、卒業時には買い取ってもらえないことがある。売りたいのであれば、単位を取ったらすぐ売ろう。
⑧今後の展望について
酒類の販売を始めるため酒類卸売免許を取得した。さらに通販で売る為には通信販売酒類小売免許も必要になる。この免許を持っていても一部のお酒しか販売できないので、現状では酒屋さんへお酒を卸す業務から始めている。さらにお酒の買い取りも始めたが前例がないため査定が難しく苦慮している。古書店の枠にとどまらず、お酒をはじめとして本以外のものも時代のニーズに合わせて商品を増やしていきたい。
講義後、受講者から積極的な質疑応答が行われました。
HFAでは今後も引き続き、学生に中小企業の魅力と現状をリアルに伝えていきます。